「流れのままに」もあり

私が実家にいたころのはなし。

夏だったと思います。

お風呂に入ったら、何かの拍子で入ってきたのか、かみきり虫のような、そこそこの大きさの茶色い虫がいました。

実家のお風呂は窓があるので、捕まえてその窓から逃がそうと思ったのですがやたらすばしこくて捕まえられず。
仕方ないので彼?を濡らさないように、遠慮しながらお風呂を済ませました。

ということを数日。
一所に住む家族も同じように捕獲を試みたものの、とにかくぴょんぴょんすばしこいのです。

で、私が入るとそれを合図にお風呂中で暴れ出すのです。裸なので窓開けたくないんだけど、外から見えにくく彼が逃げ出せるくらいの隙間をあけたり、お風呂あがったら窓も扉も全開にして逃がすように配慮したのですが。

逃げないんですよね。逃げたらいいのに。

餌になるものもないし、気づいてさっさと逃げるかおとなしく捕獲されて逃がしてもらえばいいのに、どちらも選ばず、家族がお風呂に入ると床のあちこちを激しく駆け巡り跳ね回り、といったことを数日に渡って繰り返していたのです。

彼をお迎えして数日目、私がちょうどシャンプーなどが終わり、泡を流しているところに、泡とお湯とにまみれ、排水溝でこと切れた彼を発見しました。その日も入るといつものように暴れてお風呂の床を走り回っていたので、飲まず食わずで元気だなぁとなるべく彼を避けてシャワーを使っていたんですけどね。

気の毒と思いつつ、排水溝に集まった髪の毛と一緒に始末しました。

ここで思ったのは、

この彼(虫)を俯瞰してみるならば、
1.家族全員逃がすつもりで数日遠慮しながらお風呂に入り、
2.逃げ道を作り、
3.もしくは捕獲して外に逃がそう
という3通りもの救済措置があったわけですよね。

これが虫嫌いの女の子なら大騒ぎしてつぶしておしまい、も大いにありうるわけです。
それを家族全員が彼を気遣って上記3つの行動を繰り返しているのに、暴れまわって衰弱し、生き延びるチャンスを失った彼は哀れでなりません。

そしてこれは人間にもあてはまるのではないかと。
あれこれ努力しても報われない、というのも、神様からしたらゆだねてくれたらいいのに、って話なことも多い気がするんですよね。

俯瞰してみたら、それは無駄な努力だったというね。